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大学編入学体験のまとめと,大学から見た高専について所感

この記事は Kosen Advent Calendar 2013 (http://www.adventar.org/calendars/65)参加記事です.


ハロー,こんにちは,はじめまして.ヘイムスと申します.

NaraNCTを卒業後大学に編入学し,次年度より大学院生となります.

今までにいろんな方がいろんな場所で論じられてきたことであるとは思いますが,高専から大学への編入学および大学院への進学というテーマで自分なりに感じたことなんかをまとめていこうと思います.
諸先輩方からのツッコミ待ちをしつつ,進路に悩んでいる後輩諸君にとって少しでも参考になれば幸いです.



編入学制度とは

現役高専生諸君のためにも,まずは編入学制度そのものについて触れておこうと思います.

編入学制度とは読んで字の如く,高専から外部の大学へ編入学ができる制度です.高専本科5年生が進学という進路を選択する場合は,大抵の場合が専攻科or編入学という選択肢を考えることになると思います.その昔は受け入れてもらえる大学が限られていたようですが,今では大体どの大学でも受け入れてもらえるのではないでしょうか.ただし,編入学先の学科は自分の専攻と対応する学科に限られます.ですので,文系の学部・学科や他の専攻に進学したい場合は編入学ではない選択肢を考える必要があると思います.例外もあるとは思いますが,僕自身があまり詳しくないので割愛…

大学の選び方ですが,まずはどのような大学があってどのような学部があるのか,またそこではどのような研究室があってどのような研究をしているのかなどといった点が主な着眼点になるかと思います.大学の見学ツアーや編入学向けの説明会などが春先くらいから告知されていたりするので,掲示板をチェックしましょう.また,先輩方のデータなんかが蓄積されている場合もあります.先輩方がどういった進路を選ばれたのかがわかるはずですので,有効に活用にしていきましょう.

さて,ここで編入学をするためには具体的にはどのようなプロセスを踏むかですが,一言で言えば入試を受けます.編入学試験を受験して合格することで編入学の権利を得ますが,その試験にも推薦・学力など種類があります.僕は中でも特殊な入試を受けたのですが,詳細はこのブログの過去のエントリを遡っていただけると幸いです.



大学へ編入学するメリットとデメリット

一般的に,高専生が進学する場合は専攻科で学士を取得し,国公立大学院へ入学するという流れが最もメジャーではないかと思います.僕が卒業した学科でもそうでしたし,他高専でもそういった話をよく聞きます.そのプロセスを踏むメリットは大きく,同じテーマで引き続き研究を進めやすいことであったり,自分にとって慣れ親しんだ環境でより上を目指せることであったり,こと高専で5年間を過ごした学生にとってはかなりのメリットであると言えます.

では,そういったメリットを捨ててまで外部である大学への編入学にはいかなるメリットがあり,またデメリットがあるのでしょうか.

メリット

一般的に高専生は本科を卒業するだけで,同専攻卒の大学生と同等以上のポテンシャルを持つことが出来ます.こと専門分野の話となれば,大学生を圧倒することもしばしばです.しかしながら,高専本科のカリキュラムだけではカバーしきれない範囲もありますし,高専の先生方の専門外の分野はどうしてもカリキュラムに含みにくいということもあります(これは高専だけでなく大学でも同じことが言えますが…).そういった分野を大学に行って勉強するということは非常に意義のあることだと僕は考えています.これに付随して,高専では選ぶことができなかったテーマの研究に取り組むこともできます.高専在学中に学びきれなかった分野について,大学で勉強できる可能性が高いという点が大学編入学最大のメリットだと思います.

また,世の中はどう頑張っても高専生より大学生の方が多いので,就職すれば必ず大学卒の人と一緒に仕事をする機会がくるはずです.そういった時に,大学といったところがどういうところなのかを知っておくと何かと便利かなと感じます.特に高専生は普通高校のことも知らないケースが大半ですから.

さらに,慣れた環境から外に出ることは人間的な成長をもたらしてくれます.大学に編入学するとほぼ確実に一人暮らしをすることになると思いますが,いざ知らない土地で一人暮らしをするというのは結構心細いものです.その中で一から人間関係を構築して勉学に励むということは,苦しいですが得るものは大きいはずです.

デメリット

では逆に編入学に伴うデメリットとは何なのでしょうか.

基本的には上で挙げたメリットの裏返しになります.カリキュラムが本科時代に勉強した内容の完全な焼き直しになってしまったり(編入学する以上避けては通れないことではありますが),本来興味を持ったはずの研究分野から違った内容を研究することになってしまったり.また,慣れない環境で過ごすということは人間にとって必ず負担になってしまうので,体調を崩してしまう学生も少なからずいるようです.
また,編入学は専攻科に進学する以上にお金がかかります.上で書いたように,大抵の場合は一人暮らしをすることになってしまいますのでそれにまつわる費用が必要になってきます.奨学金を借りるケースが多いと思いますが,お家のお財布事情ともよくよく相談しなくてはいけません.

いずれにせよ,必ずしも狙ったとおりの選択ができないという点においては,編入学は専攻科へ進学するよりもリスキーであると言えるでしょう.

僕が編入学を選んだ理由と,その結果

僕が編入学を選んだ理由とその顛末は,じつは上記メリット・デメリットに基いています.

高専本科在学当時,同期の誰もが認める落ちこぼれであった僕は既に就職活動スタートにも躓いており,「今から,このままで就活したところで職を手にすることも,続けることも難しいだろう」と考えました.一方,編入学試験は大体が5〜7月に行われ,少しだけ時間があったこと.現在在学している大学で特殊な編入学試験が行われ僕にはその試験を受験する資格があったこと,また幸いにも僕が勉強したいと思っていた内容が大学で学べたということがスタート点でした.

そうして進学して,勉強したいと思っていたことをある程度勉強したり高専時代に学びきれなかったことを学んだりして,高専時代よりもずっと技術に対する理解を深めることができました.しかし,やはり編入学して一年目,新たな環境でいきなり成果を出すということは中々にできないもの.僕は希望していた研究室に配属されることなく,今では全く違う分野の研究に取り組んでいます(それはそれで,今のテーマを楽しんでいます).

このように,こと大学に編入学するためにはある程度のモチベーションが必要であることと,必ずしも思い通りにいくわけえはないということが編入学を考える上で難しい点です.

編入したあとはどうなるの?

僕が編入を決めた後も,「編入後の学生生活はどうなるの?」ということがずっと気になったまま,しかし誰かに聞くこともできないままでした.せっかくなので,編入後の生活についても少し触れておこうと思います.

基本的には他の大学生と同じように生活するということはもちろんですが,編入生は大学3回生として編入します.その際に高専時代の取得単位と大学の単位とのコンバートが行われます.その結果,必要な単位と単位数を計算してそれをベースに講義を受けるという形になります.その後のことは大学によっても違ってきますが,3回生後期か4回生で研究室配属されます.

以上を踏まえると,実は編入学後は割と忙しく,毎日それなりの数の講義を受けて勉強し,単位を取る必要があります.また,気持ちは1回生だけど立場は3回生という事情から,サークルへの参加もそれなりに難しかったりします.上下関係を重んじるサークルは厳しいかもしれません.

このように大学での講義に主軸をおいた生活になります.一般の大学生とは少し違った形にはなりますが,充実した学生生活を送ることができます.その他,大学によって異なるところや編入後の進路をどのように選ぶかによっても日々の生活は変わりますので,先輩や編入後の同期たちと仲良くなって情報を交換することを強くオススメします.

最後に

編入学は学歴ロンダリングと言われることがよくあります.その言葉は間違っていませんし,事実そういった目的で編入学を選ぶ学生も少なくありません.しかし,せっかくお金と時間をかけて編入学を選ぶからには,自分なりに勉強したいことや成し遂げたいことを持って編入学を選んでもらえると良いかなぁと思います.学歴ロンダリングも立派な目標ではありますが.

上にも書いたように,編入学は専攻科進学とくらべて同じ進学といえども若干リスキーです.しかし,外の大学に出て勉強するということは必ず得るものがあります.いろんなことを慮る必要がありますが,今の自分に何が必要かをよく考えて選択をしていってもらいたいと思います.


これを読んだ高専現役学生諸君にとって,少しでも参考になれば幸いです.